イシュタルとは
イシュタル(Ishtar)は、古代メソポタミア神話において最も有名で重要な女神のひとりです。
イシュタル(イナンナ)は非常に多面的な女神で、以下のような複数の側面を持っています。
愛と美の女神
・愛、性愛、美しさ、官能を司る女神。
・人間や神々を惹きつける魅力を持つ。
・しばしば「愛の神」として金星(明けの明星・宵の明星)と結びつけられます。
→ これは後のギリシア神話のアフロディーテ、ローマ神話のヴィーナスの原型の一つです。
戦いと力の女神
・戦争、勝利、王権、権力を司る側面もあります。
・兵士たちが戦勝を祈願する対象でもありました。
・「愛」と「戦い」という相反する要素を併せ持つ、非常に複雑な神格です。
天と地の女王
・「天と地を支配する女王」として崇拝され、王たちはその加護を求めました。
・王が「イシュタルに愛される存在」であることが、統治の正当性を示す象徴ともされました。
代表的な神話
地下世界への降下(イナンナの冥界下り)
最も有名な神話のひとつです。
イナンナ(イシュタル)は、冥界の女王である姉エレシュキガルに会うために冥界へ降ります。
しかし、冥界では一枚ずつ衣服や装飾を剥がされ、最終的に力を失い殺されてしまいます。
彼女の死によって地上では生殖と生命が止まり、世界が荒廃します。
その後、神々の助けによって復活し、地上に戻る際、彼女の代わりに他の存在(しばしば恋人タムーズ=ドゥムジ)を冥界に送ることになります。
⇒この神話は、「季節の循環」「死と再生」「自然のリズム」を象徴すると考えられています。